妊娠初期から出産までの流れやトラブル

卵巣のう腫


妊娠してはじめての診察で、気づかなかった卵巣のう腫が発見されることがあります。ほとんどは良性のこぶですが、放置すると危険なこともあります。

妊娠中の卵巣のう腫

卵巣のう腫とは

正常の卵巣は、左右対称で親指大くらいの大きさですが、なんらかの原因で片方もしくは両方の卵巣が大きなこぶ状になります。ときには、赤ちゃんの頭くらいの大きさにまでなることもあります。このくらい大きくなれば、おなかがふくらんでくるのでわかりますが、ほとんどの卵巣のう腫は、外からは発見できません。内診で見つかりますが、もし妊娠していたら不安になると思います。でも、この卵巣のう腫はガンはごくまれで、ほとんどが良性のこぶです。しかしそのままはうっておくと、どんどん大きくなるばかりでなく、腹水がたまったりして体を衰弱させます。
また、卵巣のう腫の茎捻転といって、卵巣のつけ根がねじれ、はげしい下腹痛を伴って、そのままだと血液が流れなくなって壊死状態になり、生命の危険すら出てきます。このような場合は、早急に手術が必要です。卵巣のう腫が見つかったら原則として手術します。手術でのう腫をとり出し組織を調べて、悪性のガンか良性のこぶかを確認します。良性のこぶであれば安心です。

卵巣のう腫図解

ルテインのう腫

卵巣は左右に一つずつあるので、片方をとり除いても、もう一方が正常なら、排卵も起こり、妊娠の可能性も十分に残されます。自然に消えてしまうものも卵巣のう腫でも、なかには妊娠中期になると自然に消えてしまうものもあります。妊娠2~3ヶ月ごろに、握りこぶしくらいの大きさの卵巣のう腫が見つかったのに、4ヶ月過ぎにはすっかり影も形もなくなり、正常に戻っている例もあります。これをルテインのう腫といいます。
卵巣というものは、脳の下垂体前葉というところから分泌されるゴナドトロピンというホルモンの刺激を受けて、排卵を起こします。また、妊娠すると受精卵が子宮の壁に着床して胎盤ができますが、この胎盤からゴナドトロピンとよく似た絨毛性ゴナドトロピンが分泌されるようになります。妊娠初期には多量に分泌されて妊婦の体内を回ります。ところが、4~5ヶ月ごろになると減少してきます。つまり、4ヶ月過ぎに消えてしまうルテインのう腫は、この絨毛性ゴナドトロピンがつくり出したのう腫で、減少するに従って消えてしまうわけです。

手術は妊娠4ヶ月ごろが最適

手術をして片側の卵巣を摘出しても妊娠は無事に進行します。妊娠と合併した卵巣のう腫の手術は、ドップラーという器械で胎児の心音が確認できる妊娠4ヶ月はじめにするのが適当だと思われます。この時期になれば、胎児の体もでき上がっているので、麻酔や注射の影響もありませんし、流産の危険も少なくなります。